一覧に戻る
キャリア2026年10月27日

AIで新卒・未経験エンジニアの採用は減った?米国と日本の一次データで見る

ゆめさく

AI で、新卒や未経験のエンジニアの採用は減っている?

米国では、大手のテック企業の新卒の採用が、2019年と比べて大きく減ったという調査があります。一方で日本では、企業の9割が「AI が広まっても新卒の採用数は変わらない」と答えています。国と、比べている物によって、答えが違います。

もう1つ大事なのは、減っているのが「エンジニアの仕事ぜんぶ」ではなく「入口の採用」だという点です。そして、その原因がどこまで AI なのかは、調べた本人たちも「まだ分からない」と書いています。

この記事では、米国と日本の元の調査を開いて、何年と何年を、どの会社の集まりで、何の割合で比べた数なのかまで書きます。最後に、未経験から目指す人が今日からできることを2つと、数字のニュースの読み方を説明します。

  • 米国の新卒 大手テック12社で、2019年より約65%少ない (SignalFire、2026年6月)
  • エンジニアの採用 同じ12社で減りは11%。採用全体の25%より小さい
  • 原因 調べた研究者は「原因の推定ではない」と書いている。AI がどこまで原因かは分かっていない
  • 日本 企業の90.3%が「AI が広まっても新卒採用数は変わらない」と答えた (マイナビ、2026年2月)
  • 今日から 作った物を見える形で残すこと、仕組みを説明できるようにすること

米国では、何がどれだけ減ったのか

大手テック企業の新卒の採用は、2019年より約65%少ない

米国のベンチャーキャピタルの SignalFire は、毎年「State of Talent Report」を出しています。2026年6月22日の版には、次の数が載っています。

  • 新卒と入社直後の層 (new grad/entry-level) の採用は、2019年と比べて、大手テック企業で約65%減、創業まもない会社で約76%減
  • 大手テック企業の採用全体は、直近12か月の合計で、2019年より25%少ない

ここで言う大手テック企業は、Alphabet、Meta、Apple、Amazon、Microsoft、Netflix、NVIDIA、Tesla、Uber、Airbnb、Block、Stripe の12社です。創業まもない会社は、上位100の投資会社から、直前の4年にシードからシリーズ B の出資を受けた会社を指します。数は、SignalFire が自社の仕組み (Beacon AI) で6億5千万人以上の経歴を追って集めたデータです (SignalFire の2026年の報告)。

1年前の2025年5月の版では、時価総額で上位15社の大手テック企業で、新卒の採用は2023年より25%減、2019年より50%以上減でした。採用した人のうち新卒は7%でした (SignalFire の2025年の報告)。2つの版で会社の集まりが違う (15社と12社) ので、数をそのまま並べて比べることはできません。どちらの版でも、2019年より大きく減っている、という向きは同じです。

若い人の雇用は、AI の影響を受けやすい仕事で19%下振れ

米国スタンフォード大学のデジタル経済研究所は、給与計算の会社 ADP の数百万人分のデータで、AI と雇用の関係を調べています。題は「Canaries in the Coal Mine?」(炭鉱のカナリア) で、2026年8月12日に改訂版が出ました。

  • 経済全体で、仕事が広く奪われている証拠は見つからない
  • 22〜25歳の人の雇用は、AI の影響を受けやすい仕事では、受けにくい仕事と同じ伸びだった場合と比べて19%低い。経験のある人には、同じような差は見られない
  • この差は、2025年7月時点のデータでは15%、2026年6月時点のデータでは19%で、広がっている
  • 差は、辞める人が増えたことより、主に若い人を採らなくなったことで生まれているように見える

(スタンフォード大の論文の頁、2026年8月の著者のメモ)

比べ方の条件を、1つの表に

見出しの数だけを見ると、同じ話に見えます。けれど、比べている年も、会社の集まりも、数の意味も違います。

数何と何を比べたかどの集まりか何の数か
約65%減今の新卒の採用と2019年大手テック12社新卒と入社直後の層の採用の数
約76%減今の新卒の採用と2019年上位100の投資会社が出資した、創業まもない会社新卒と入社直後の層の採用の数
25%減直近12か月の採用と2019年大手テック12社職種を問わない採用の全体
11%減今のエンジニアの採用と2019年大手テック12社エンジニアの採用
19%低いAI の影響を受けやすい仕事と、受けにくい仕事の伸びの差ADP の給与のデータに入る米国の働く人22〜25歳の雇用 (採用の数ではない)

減っているのは「エンジニアの仕事ぜんぶ」なのか

同じ大手12社で、エンジニアの採用は減りが小さい

SignalFire の2026年の版では、大手12社の採用全体が2019年より25%減ったのに対し、エンジニアの採用の減りは11%でした。採用した人のうちソフトウェアエンジニアの割合は、2019年の46%から55%に増えています。デザイン、企画、マーケティングの採用のほうが大きく減りました。

つまり、会社はエンジニアを採るのをやめたのではなく、経験のある人を選んで採るようになった、というのがこの調査の見立てです。いちばん細くなったのが、新卒と入社直後の入口でした。

米国の労働統計局の見通しは、職種で向きが分かれる

米国労働統計局 (BLS) の職業の手引き (2026年8月27日更新) は、2025年から2035年の雇用の見通しを、職種ごとに出しています。

職種 (BLS の分け方)2025〜2035年の見通しBLS が書いている理由
ソフトウェア開発者、品質保証、テスト担当10%増AI、IoT、ロボットなどのソフトウェア開発が広がるため
コンピュータプログラマー7%減AI などで、くり返しのプログラミング作業の自動化が進むため

出典は BLS のソフトウェア開発者の頁 と BLS のプログラマーの頁 です。BLS は、コードを書いて動くように直す「プログラマー」と、ソフトウェアを設計して作る「開発者」を、別の職種として数えています。プログラマーが減る理由に BLS は AI による自動化を挙げ、開発者が増える理由には AI、IoT、ロボットなどのソフトウェア開発の広がりを挙げています。2つは別の職種の見通しで、AI だけで増減が分かれると言っているわけではありません。

日本では、新卒の採用は減っているのか

企業の90.3%が「AI が広まっても新卒採用数は変わらない」

マイナビが2026年2月25日に出した「2027年卒 企業新卒採用予定調査」では、AI が広まるなかで自社の新卒の採用数がどう変わるかを、企業に聞いています。答えは「変わらない」が90.3%、「増える」が5.7%、「減る」が4.0%でした。

新卒を採る理由で多かったのは「若手人材の長期育成を重視しているため」(65.1%) です。AI の時代に新卒に求める力では「コミュニケーション力 (AI を補完し、人との協働を円滑にする力)」が50.0%で最も多くなりました。調べたのは2026年1月26日から2月8日で、答えた会社は1,579社です (マイナビキャリアリサーチLab)。

気をつけたいのは、これは企業の「予定」と「考え」を聞いた調査で、実際に採った人数ではないことです。また、エンジニアだけでなく、すべての職種の新卒について聞いています。

IT の仕事の求人倍率は1.48倍、ただ求職者は増えている

厚生労働省の「一般職業紹介状況」の2026年8月分では、ハローワークの「情報処理・通信技術者」(パートを除く常用) の有効求人倍率は1.48倍でした。職業全体の1.17倍より高い値です。

一方、前の年の同じ月と比べると、求人は0.9%減り、仕事を探している人は5.8%増えました。そのため倍率は0.10ポイント下がっています (一般職業紹介状況 令和8年8月分、参考統計表7-2と8-1)。この数はハローワークを通した求人と求職だけで、民間の転職サイトや新卒の採用は入っていません。

会社の側は「人が足りない」と答えている

情報処理推進機構 (IPA) の「DX動向2025」では、日本の企業の85.1%が、DX (デジタルの技術で仕事のやり方を変えること) を進める人材が足りないと答えています (IPA、DX動向2025 AI時代のデジタル人材育成)。同じ文書は、AI で求められる技能が速く変わるので、実際に作って学ぶ「実践型の学習」を広げる必要がある、と書いています。

分かっていること、分かっていないこと

分かっていること

  • 米国の大手テック企業では、新卒と入社直後の層の採用が、2019年より大きく減った
  • 同じ会社で、エンジニアの採用の減りは、採用全体の減りより小さい
  • 米国の若い人の雇用では、AI の影響を受けやすい仕事ほど伸びが低く、その差は主に採用が減ることで生まれているように見える (原因の推定ではない)
  • 日本の企業の多くは、AI を理由に新卒の採用数を変える予定はないと答えている
  • 日本のハローワークでは、IT の仕事の求人倍率は全体より高いが、前の年より少し下がった

分かっていないこと

  • 米国の入口の採用が減った原因のうち、どれだけが AI か。スタンフォード大の研究者は、自分たちの結果を「原因の推定ではなく、早い時期の様子を示す物」と書いています。生成 AI の前から差が出ていた所があること、データの集め方で結果が変わりうることも、自分たちで書いています。SignalFire の2025年の版も、出資の額の小ささ、チームの小型化、新卒の育成の仕組みの減少を、AI と並べて理由に挙げています
  • 米国の動きが、日本でも同じように起きるか。日本の調査は「予定」を聞いた物で、エンジニアの新卒だけを数えた公の統計は見つけられませんでした
  • この先の数年で、何割の仕事が変わるか。この記事では、先の数を予想しません

AI がプログラマーの仕事を奪うのかという、より広い問いは、AIはプログラマーの仕事を奪う?でも扱っています。

未経験から目指す人が、いまできること

入口が細くなったとき、採る側が見たいのは「この人は入ってすぐに何ができるか」です。SignalFire の2026年の版も、新卒に向けて「出して動いているアプリ、オープンソースへの参加などを、確かめられる形でまとめる」ことを勧めています。経歴が無い人ほど、作った物と考えた跡が代わりになります。

1. 作った物を、見える形で残す

作った物は、手元のパソコンに置いておくだけでは見てもらえません。次の4つがそろうと、見る人が中身を確かめられます。

  • 公開した URL 誰でも開ける住所があると、本当に動くことが伝わる
  • GitHub のコードと変更の記録 少しずつ積んだ記録から、どう作り進めて途中で何を直したかが伝わる
  • README (説明の文) 「何のために作ったか」「工夫した所」「直せていない所」を書くと、自分の作った物を言葉で説明できることが伝わる
  • エラーと直し方のメモ つまずいたエラーとどう直したかから、分からないときに自分で調べて解ける力が伝わる

大きな物を1つ作るより、小さな物を作って公開し、直していく記録が残るほうが、見る人には伝わります。題は、自分の困りごとや、前の仕事で見た手間から選ぶと、「何のために作ったか」を自分の言葉で書けます。ありがちな作品の何が問題かは、ポートフォリオが「Todoアプリ」だと落ちる理由にまとめています。

2. 仕組みを説明できる力をつける

AI は、コードの下書きを速く出してくれます。BLS がプログラマーを「減る」と見る理由も、くり返しの作業の自動化でした。AI が出したコードを確かめて直す力は、今の仕事でも求められていて、学ぶ間に身につけられます。今日から、次のことを習慣にしてみてください。

  • AI が出したコードを、1行ずつ「何をしているか」を自分の言葉で書いてから使う
  • エラーが出たら、まずエラーの文を読み、どの行の何が原因かを自分で言ってから AI に聞く
  • 画面に出た結果が正しいかを、自分で用意した例で確かめる
  • 「データがどこから来て、どこに保存されるか」を、図にして説明できるようにする

これは、マイナビの調査で企業が求めた「AI を補完する力」や、IPA が挙げた「実践型の学習」とも重なります。

3. 数字のニュースを読むときの4つの問い

「新卒の採用が半分に」のような見出しを見たら、次の4つを確かめると、自分に関係があるかを落ち着いて判断できます。

  1. 何年と何年を比べた数か (2019年との比べは、2022年の採用の山を挟みます)
  2. どの国の、どの会社の集まりの数か
  3. 採用の数か、雇われている人の数か、割合か
  4. 原因を AI と言い切っているか、それとも「関係がありそう」と書いているか

よくある質問

AI でエンジニアの仕事はなくなりますか?

この記事で見た調査に、エンジニアの仕事全体がなくなっているという数はありません。スタンフォード大の研究は経済全体で仕事が広く奪われている証拠は見つからないとし、SignalFire の調査でも、大手テック企業のエンジニアの採用の減りは採用全体より小さい値でした。変わっているのは、仕事の中身と、入口の採用の細さです。

今から未経験でエンジニアを目指すのは遅いですか?

米国の大手テック企業では入口が細くなっています。日本では、企業の多くが新卒の採用数を変えないと答え、IT の仕事の求人倍率も全体より高い一方、求職者が増えて倍率は少し下がりました。誰でも入りやすい時期とは言えません。遅いかどうかを年や時期で決めるより、作った物を残し、仕組みを説明できるところまで準備を進めるほうが、自分で動かせる部分です。

新卒と中途の未経験では、どちらが影響を受けやすいですか?

米国の調査は、主に22〜25歳や新卒の層を見た物です。日本で、未経験の中途の採用が AI でどう変わったかを示す公の統計は、この記事を書いた時点で見つけられませんでした。中途の未経験の人は、前の仕事の経験と、作った物を合わせて伝えられる点を生かすのがよいと考えます。

AI を使って学ぶのは、ずるいことですか?

ずるいことではありません。仕事でも AI を使う場面は増えています。大事なのは、AI が出した物をそのまま出すのではなく、説明できて、確かめられて、直せることです。学ぶ間から、AI の答えを自分で確かめる習慣をつけておくと、その力が残ります。

出典

どれも2026年10月27日に原文を開いて確かめました。

  • SignalFire「State of Talent Report 2026」2026年6月22日 原文を開く
  • SignalFire「State of Talent Report 2025」2025年5月20日 原文を開く
  • Stanford Digital Economy Lab、Brynjolfsson, Chandar, Chen「Canaries in the Coal Mine?」2026年8月12日改訂 原文を開く
  • 米国労働統計局「Occupational Outlook Handbook」Software Developers 原文を開く
  • 米国労働統計局「Occupational Outlook Handbook」Computer Programmers 原文を開く
  • マイナビ「2027年卒 企業新卒採用予定調査」2026年2月25日 原文を開く
  • 厚生労働省「一般職業紹介状況 (令和8年8月分)」2026年10月2日 原文を開く
  • 情報処理推進機構「DX動向2025 AI時代のデジタル人材育成」原文を開く

Other Articles

他のコラム

\ 無料30日チャレンジを実施中 / 実際の教材で学びを体験してみよう

LINE登録はこちら